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フラバンジェノール®と内外美容
草場宣廷 1),中山樹一郎 2)
1)株式会社東洋新薬 開発本部 2)福岡大学医学部 皮膚科教室
FOOD STYLE 21 vol.15 no.5, 55-57, 2011
はじめに
最近、内外美容という考え方が広まってきている。これまでの美容は、皮膚のシミなどの気になる部分や、それを予防したい部分を中心に、化粧品の塗布(外用)や、レーザーによる施術などが中心であった。
近年、アンチエイジング(抗老化)への関心が高まってきているが、老化の大きな原因として酸化ストレス1)などによるダメージが挙げられる。酸化ストレスによる皮膚のダメージ予防には、化粧品の外用も大事だが、抗酸化作用が期待される機能性食品素材をサプリメントとして内服する方が適しているという意見もある。
そこで、化粧品の外用により気になる肌をケアする(外からの美容)とともに、サプリメントの内服による体の内側からのケア(内からの美容)を組み合わせることによる『内外美容』という考え方が生まれている。様々なメーカーより、同一ブランドに内と外の美容商品を用意して「内外美容」を謳った商品が販売されている。なお、内外美容商品の売上げは、2010年度見込みで前年比126%と急速な成長を遂げている(富士経済調べ)2)。
これまで我々は、抗酸化、抗老化などが期待される素材であるフラバンジェノール®(松樹皮抽出物)の研究を進めてきた3),4)。しかしながら、これらの研究は内服での臨床データであり、外用での研究は少なかった。そこで、最近、我々はフラバンジェノール®の外用、及び内服と外用の組み合わせにおける作用をいくつか検討したので、本稿ではその結果に関して報告する。
フラバンジェノール®(松樹皮抽出物)とは
フラバンジェノール®は、フランス南西部に位置するランド地方の北大西洋に面する海岸付近に植林された海岸松(かいがんしょう)の樹皮を原料とした機能性素材であり、サプリメントや化粧品に利用されている。
フラバンジェノール®はポリフェノールに富み、その主成分はカテキンが2~4個縮重合したオリゴメリック・プロアントシアニジン(OPC)(図1)という抗酸化作用の高い特徴的なポリフェノールである5)。
フラバンジェノール®を内服した際の臨床試験、動物試験の結果として、抗酸化作用6)、美白作用7)、血流改善作用8)、血中脂質改善作用9)などの様々な効果が認められている。
フラバンジェノール®の外用データ
3次元培養表皮モデル(LabCyte EPIモデル)にフラバンジェノール®から得た低分子画分及び高分子画分溶液を滴下し、Folin-Denis法により、皮膚モデル内へのポリフェノールの浸透を確認する皮膚透過性試験を行った10)。
いずれの場合も、3次元培養表皮モデルにポリフェノールが浸透していることが確認された。このことから、フラバンジェノール®を皮膚に塗布した場合、ポリフェノール成分が皮膚に浸透することが示唆された。
次に、フラバンジェノール®の外用による皮膚血流への影響を検討するために、レーザー・ドップラーにて皮膚血流量の変動を評価した11)。冷水負荷後に、フラバンジェノール®水溶液を外用した場合と、精製水、市販入浴剤を外用した場合の結果をクロスオーバー法にて比較した。フラバンジェノール®水溶液使用時は、精製水使用時に比べて有意に血流の改善が認められ(図2)、フラバンジェノール®の外用により皮膚血流量が改善することが示された。
このことから、フラバンジェノール®の外用が、「くすみ」などの皮膚の諸症状へ効果をもたらすことが示唆された。
フラバンジェノール®の内服と外用を組み合わせた場合のデータ
動物での育毛に関する実験結果を示す12)。
フラバンジェノール®の育毛効果を検討するために、C3Hマウスを4群に分け、背部の毛をバリカンで刈り取った後の育毛状態を6段階スコアにて評価を行った。1群はコントロール群として溶媒のみを塗布し、1群には「1%フラバンジェノール®水溶液」を摂取させ(経口摂取群)、1群には「0.05%フラバンジェノール®/50%エタノール溶液」を背部に塗布し(塗布群)、1群には塗布と摂取を併用させた(内外併用群)。
その評価結果は「コントロール群」<「経口摂取群」(内服)<「塗布群」(外用)<「内外併用群」(図3)となり、フラバンジェノール®を内外併用した場合、内服や外用での単独使用よりも効果が高いことが示唆された。
おわりに
美容は、これからも社会的要望が高いと予想される分野であり、中でも内外美容は今後の発展が期待されている領域である。フラバンジェノール®(松樹皮抽出物)は、内服による抗酸化、抗老化だけでなく、外用による様々な作用が期待できる素材であり、内外美容に適した素材といえる。
今後も、フラバンジェノール®を用いた内外美容に関して、益々研究を進めて行きたいと考えている。
著者略歴
くさば・のぶたか/Nobutaka Kusaba
1997年東京大学教養学部基礎科学科第一卒業後、医療機器メーカーにて製品開発に携わる。2005年㈱東洋新薬に入社。研究テーマ:機能性食品素材の開発
なかやま・じゅいちろう/Juichiro Nakayama
1975年九州大学医学部卒業。1981年、同学部にて博士号取得の後、米国国立衛生研究所(国立癌研究所)、九州大学医学部助手、准教授を経て、1999より福岡大学医学部皮膚科教室教授に就任、現在に至る。
専門・研究テーマ:皮膚科学
著書・論文:「最新皮膚科学体系」(中山書店)、「皮膚の抗老化最前線」(エヌ・ティー・エス)など。
引用文献
1)近藤元治編:フリーラジカル、メジカルビュー(1992)
2)富士経済:スキンケア開発トレンドデータ 2010-2011(2010)
3)中山樹一郎 他:「皮膚の老化とアンチエイジング」, Food Style21, 12(9), p67-69(2008)
4)杉山大二朗 他:「フラバンジェノール®の美容効果~メラニン生成を中心に~」, Food Style21, 13(7), p28-29(2009)
5)森貞夫 他:「フランス海岸松ポリフェノール「フラバンジェノール」の抗酸化活性」, New food Industry, 46(5), 1-7 (2004)
6)杉山大二朗 他:「電子スピン共鳴(ESR)法による
フラバンジェノール®の抗酸化能評価」, 第16回 日本未病システム学会 学術総会, p131 (2009)
7)古村南夫 他:「松樹皮抽出物(フラバンジェノール®)の老人性色素斑・肌荒れに対する臨床効果の検討」, Aesthetic Dermatol, 15, 94-102 (2005)
8)Ohnishi Y et al: 「Effects of Oligomeric Procyanidins(OPCs) on Human Erythrocyte Filterability and Microcirculation」,Journal of Japanese Society of Biorheology, 19(2), 83-92 (2005)
9)池口主弥 他:「松樹皮抽出物含有錠剤食品の摂取によるヒト血清脂質および安全性に及ぼす影響」, 日本食品新素材研究会誌, 9, 26-36(2006)
10)杉山大二朗 他:「フラバンジェノール®の皮膚浸透性およびメラニン生成抑制作用の検討」,2009年度日本農芸化学会大会講演要旨集, p233 (2009)
11)草場宣廷 他:「松樹皮抽出物(フラバンジェノール®)の塗布による血流改善作用の検討」,2011年度日本農芸化学会大会講演要旨集,p211 (2011)
12)内山貴司 他:「フラバンジェノール®の育毛に対する効果」,ファインケミカル,36(1) , p45-51(2007)
※「フラバンジェノール」は、株式会社東洋新薬の登録商標です
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