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ターミナリアベリリカ(Terminalia bellirica)抽出物による食後血中中性脂肪上昇抑制作用の検討
―無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験―

ターミナリアベリリカ™

草場宣廷1)、高野晃1)、神谷智康1)、山口和也1)、髙垣欣也1)、田丸靜香2,3)、田中一成3)
1) 株式会社東洋新薬 研究開発本部  2)福岡工業大学 工学部  3)長崎県立大学 看護栄養学部

薬理と治療 vol.43 No.8, 1175-80, 2015

ABSTRACT(概要)

Objectives:
A double-blind placebo controlled crossover clinical study was conducted on healthy adults volunteers to examine the effects of Terminalia bellirica extract on elevation of postprandial serum triglyceride.

Methods:
The subjects were 34 healthy adult volunteers (mean age of 22.1 ± 2.0 years). The subjects were randomly divided to three groups and took a high fat meal (41.6g fat) with test supplement containing 200mg or 300mg Terminalia bellirica extract(the 200mg group, the 300mg group), or a placebo supplement (the control group). Serum triglyceride was measured before and 2, 3, 4, and 6 hours after intake of the high fat meal.

Results:
Compared to the control group, the 200mg group and the 300mg group had significantly lower serum triglyceride at 2 hours after the high fat meal and IAUC of postprandial serum triglyceride (each p<0.05).

Conclusions:
These results suggested that the Terminalia bellirica extract had inhibitory effect on the elevation of postprandial serum triglyceride.

はじめに

昨今、わが国では食生活の欧米化に伴い、肉類や油脂類などの高脂肪食を摂取する割合が高くなってきている。厚生労働省が策定する日本人の食事摂取基準において、脂肪エネルギー比率の目標量は20~30%と定められているが、30%を超える者は年々増加傾向にあり1)、肥満や脂質異常症などの発症リスクの増大が危惧されている。脂質異常症が冠動脈疾患の主要なリスクの一つであることは知られている2)が、近年、空腹時血中中性脂肪だけでなく、食後血中中性脂肪が高いことや、高い状態が長時間継続することも動脈硬化性疾患の発症、及び進展を早めることが分かってきている3)

空腹時血中中性脂肪が健康診断の血液検査などで測定されるのに比べ、食後血中中性脂肪は測定されることが少なく、空腹時血中中性脂肪は正常域であるが食後血中中性脂肪が高値となる人では動脈硬化性疾患などの発症リスクが高くなっていることが予想される。そのため、食後血中中性脂肪の上昇を抑制することは、動脈硬化の予防に役立つものと考えられる。

食後血中中性脂肪の上昇を抑制する食品素材としては、難消化性デキストリン4)、カテキン5)、烏龍茶重合ポリフェノール6)など様々な素材について報告がなされている。

今回、我々が検討したターミナリアベリリカ(Terminalia bellirica)は、南アジア、東南アジアなど熱帯地域に分布している落葉広葉樹で、乾燥した地域を除いて高度約1,200mまで生育し、樹高は時に29mを越えることもある植物である。樹幹はまっすぐで灰青色、葉は広い楕円形で、長さ10~20cm、幅は5~8cmとなる。その果実はポリフェノールに富み、古来、インドの伝統医学である「アーユルーヴェーダ」ではハーブ(生薬)として使われてきており、肝保護作用などの効果があると言われている7)。また、その果実の抽出物はin vitroの試験結果よりリパーゼ阻害作用を有すことが報告されており8) 、抽出物を分画してリパーゼ阻害作用を検討した結果、その関与成分はポリフェノールの一種である没食子酸(gallic acid)との報告がなされている9)

しかしながら、ターミナリアベリリカが実際に人の食後血中中性脂肪の上昇を抑制することを示す直接の知見はない。

そこで我々は、健常成人を対象としてターミナリアベリリカの食後中性脂肪上昇抑制作用を検討するために本試験を実施したので報告する。

また、同様の食後中性脂肪上昇抑制を検討した臨床試験としては、中高年の特にメタボリック・シンドローム、またはその予備軍の方を対象とした知見が多いが4),5),6)、本試験は大学の学生、及び職員を対象に公募を行ったためか、被験者には若年層の女性が多くなっている。そこで解析対象を若年層の女性に限った場合の結果についても検討したので報告する。

対象と方法

対象者

本試験は長崎県立大学一般研究倫理委員会の審議・承認(委員長 立石憲彦)を受けた上で、ヘルシンキ宣言に則り実施された。被験者は長崎県立大学に属する健常な成人(学生、及び職員)を対象に公募によって募った。応募者のうち、被験者の選定基準(表1)に従って、被験者を選定した。なお、被験者には試験開始前に、試験の目的、内容、及び方法について十分な説明を行った後に、文書による同意を得た。

ターミナリアベリリカ®(Terminalia bellirica)抽出物による食後血中中性脂肪上昇抑制作用の検討①

試験食品

試験食品には、ターミナリアベリリカ抽出物(㈱東洋新薬)に副原料として微粒二酸化ケイ素、ステアリン酸カルシウム、微結晶セルロース、還元パラチノースを混合後、打錠して調製した錠剤食品を用いた。試験食品としてターミナリアベリリカ抽出物を1回あたり200 mg、または300 mg配合した被験食品2種類と、ターミナリアベリリカ抽出物をカラメル色素に置き換え、それ以外の組成はターミナリアベリリカ抽出物配合の被験食品とまったく同じとし、外見上も被験食品との区別がつかないように調製した対照食品の併せて3種類を調製した。試験食品は(株)東洋新薬で製造され、提供された。

1回の摂取量はいずれの試験食品も4錠(250 mg×4錠)で、アルミパウチの分包に密封した状態で準備した。各試験食品の熱量、及び栄養成分値を表2に示す。なお、没食子酸量はHPLC法で定量した。

ターミナリアベリリカ®(Terminalia bellirica)抽出物による食後血中中性脂肪上昇抑制作用の検討②

負荷食品

試験に用いる負荷食品は、1人当たりスジャータたっぷりコーンクリームポタージュ生(名古屋製酪㈱)200.0 gに雪印ラード(雪印メグミルク㈱)14.0 g、雪印無塩バター(雪印メグミルク㈱) 21.4 gを混ぜたものと、プレーンベーグル(常磐産業㈱)60 gを用い、その脂肪量の合計は41.6 gであった。

試験スケジュール

試験は二重盲検クロスオーバー法にて実施した。被験者を3群に無作為に割り付け、1週間以上の間隔をあけて3種類の試験食品をランダムな順番で摂取させる以外は同じ内容で試験を3回実施した。

試験前日は、禁酒とし、21:00までに指定した同じメニューの夕食を摂取させ、その後は試験終了時まで水以外は絶食とした。また、試験日当日は試験開始1時間前から試験終了まで禁煙とした。

試験日当日は15分の安静の後に被験者に対して摂取前の測定(採血)を行い、午前9時に水100mLとともに試験食品を摂取させ、その直後に負荷食品を摂取させた。負荷食品は試験食品摂取後10分以内に摂取するように指導した。負荷食品摂取2時間後、3時間後、4時間後、6時間後にも測定を行い、6時間後の測定をもって、その日の試験を終了とした。

約2週間に及ぶ試験期間中の食事は、測定(採血)前日の夕食を除いて被験者本人の自由としたが、暴飲暴食を避けるよう指導し、血中中性脂肪に影響する健康食品の摂取は禁止とした。また、被験者には緊急の場合を除き医薬品の使用を禁止し、緊急で摂取した場合は試験担当者に報告することとした。

測定項目

摂取前、摂取2時間後、3時間後、4時間後、6時間後に採取した血液を用いて、被験者の血中中性脂肪を測定した。測定にはトリグリセライド-Eテストワコー(和光純薬工業(株))を用い、2回測定の平均値を測定値として用いた。

試験開始前に事前アンケートを行い年齢、性別、身長、体重、既往歴、生活習慣を確認し、試験日当日はアンケートで体調を確認するとともに、測定ごとに試験担当者が被験者の体調を確認した。

解析方法

各測定時の食後中性脂肪の変動は、ターミナリアベリリカ抽出物200 mg含有被験食品(200 mg群)、300 mg含有被験食品(300 mg群)、対照食品(対照群)摂取時毎に、摂取前の測定値を基に変化量を集計し、食後中性脂肪上昇の曲線下面積(IAUC)を算出した。

各測定時の食後中性脂肪の変化量、及びIAUCについては200 mg群、300 mg群、対照群の3群について一元配置分散分析の後にFisherのPLSD法にて検定を行った。

有意水準は両側5%とし、統計解析ソフトにはStatView Ver.5.0(SAS Institute Inc.)を使用した。

また全被験者だけでなく、被験者を若年女性(21~24歳の女性)に限った場合について同様に解析を行った。

結果

解析対象被験者

試験への応募者に試験内容の説明を行い、同意が得られた42名を被験者として試験を開始した。被験者のうち5名は、スクリーニングに参加できなかったためその時点で脱落とした。また、スクリーニング後に3名が試験前日に指定の夕食を摂取できなかったため、脱落とした。

最終的に解析の対象とした被験者は34名となった。解析対象者の被験者背景を表3に示す。

ターミナリアベリリカ®(Terminalia bellirica)抽出物による食後血中中性脂肪上昇抑制作用の検討③

食後血中中性脂肪の変動

2-1)解析対象全被験者
摂取前、摂取2時間後、3時間後、4時間後、6時間後の食後血中中性脂肪の変動を図1に示す。摂取2時間後において200 mg群、及び300 mg群について、摂取4時間後において200 mg群について対照群に対して統計学的に有意な低下が認められた(いずれもp<0.05)。

ターミナリアベリリカ®(Terminalia bellirica)抽出物による食後血中中性脂肪上昇抑制作用の検討④

また各群のIAUCの結果を図2に示す。200 mg群、及び300 mg群で対照群に対して統計学的に有意な低下が認められた(いずれもp<0.05)。

ターミナリアベリリカ®(Terminalia bellirica)抽出物による食後血中中性脂肪上昇抑制作用の検討⑤

2-2)若年女性(21~24歳)
若年女性(21~24歳)32名の摂取前、摂取2時間後、3時間後、4時間後、6時間後の食後血中中性脂肪の変動を図3に示す。摂取2時間後において200 mg群、及び300 mg群で対照群に対して統計学的に有意な低下が認められた(いずれもp<0.05)。

ターミナリアベリリカ®(Terminalia bellirica)抽出物による食後血中中性脂肪上昇抑制作用の検討⑥

また各群のIAUCの結果を図4に示す。200 mg群、及び300 mg群で対照群に対して統計学的に有意な低下が認められた(いずれもp<0.05)。

ターミナリアベリリカ®(Terminalia bellirica)抽出物による食後血中中性脂肪上昇抑制作用の検討⑦

体調確認

当日のアンケート、及び測定時の体調確認において被験者に体調不良等の臨床上問題となる症状は確認されなかった。

考察

近年の研究では、空腹時の中性脂肪と同様に、食後の血中中性脂肪が高値であることも動脈硬化性疾患の危険因子となることが分かってきている3)。空腹時血中中性脂肪の値は健康診断などで目にすることが多いが、食後血中中性脂肪値は測定されること自体少なく、気付かれにくいリスクの一つであり、食後血中中性脂肪の上昇を抑制することは動脈硬化の予防に役立つものと考えられる。

今回、我々は食後血中中性脂肪の上昇を抑制することが期待されている新規食品素材であるターミナリアベリリカ果実の抽出物について、臨床試験を実施し、その作用を確認した。

ターミナリアベリリカの食後中性脂肪上昇抑制作用の機序としてはリパーゼ阻害作用が考えられる8)。ターミナリアベリリカのリパーゼ阻害についてはMakiharaら9)がターミナリアベリリカを分画して検討を行っているが、各画分の膵リパーゼ阻害作用を検討してリパーゼ阻害作用の高い画分を分析した結果、その画分の主要構成成分は没食子酸であったと報告している。この知見から、ターミナリアベリリカのリパーゼ阻害の関与成分としてはターミナリアベリリカ中の没食子酸が考えられる。

茶カテキンや烏龍茶ポリフェノールは、水酸基に没食子酸がエステル結合したガロイル基を有している分子種(エピガロカテキンガレート等)を主要な成分とし、リパーゼ阻害活性を示すことが報告されている10,11)。これらのポリフェノールは脂質の消化吸収を抑制し、便中への脂質排泄量を増加させることで食後血中中性脂肪の上昇を抑制することが示されている12,13)。ターミナリアベリリカでは、没食子酸が茶カテキンや烏龍茶ポリフェノールと同様にリパーゼ阻害作用によって脂質の消化吸収を抑制し、脂質排泄を促進することで食後血中中性脂肪の上昇を抑制していることが考えられる。

本試験の被験者のうち21~24歳の成人女性(32名)に限って解析を行ったところ、食後中性脂肪の摂取2時間後、及びIAUCについて、200 mg群、及び300 mg群ともに対照群に対して統計学的に有意な低下が認められた(いずれもp<0.05)。このことから、ターミナリアベリリカは健康な若年女性に対して食後中性脂肪上昇抑制作用作用をあらわすことが示された。

また、本試験において、体調不良等の有害事象が見られなかったことより、本食品の摂取は安全であることが示唆された。

本試験の限界としては、中高年の被験者の参加が少なかったことがあげられる。そのため、より幅広い被験者層での臨床試験の実施が望まれる。

結論

健常成人を対象としてターミナリアベリリカ抽出物の摂取が食後血中中性脂肪の変動に与える影響を検討するために二重盲検クロスオーバー法にて臨床試験を実施した。

その結果、対照食品摂取時に比べてターミナリアベリリカ抽出物を200 mg、及び300 mgを含む被験食品摂取時には2時間後の血中中性脂肪の上昇、及びIAUCが有意に抑制された。

以上の結果より、ターミナリアベリリカ抽出物を200 mg以上摂取することで、食後の血中中性脂肪の上昇が抑制されることが示唆された。

引用文献

1)厚生労働省.国民健康・栄養調査.(平成19年)
2)日本動脈硬化学会(編). 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版. 一般社団法人日本動脈硬化学会;2012.
3)多田紀夫.食後高脂血症と高レムナント血症-脂肪負荷試験の意義-.動脈硬化 2000 ; 27(12):319-25.
4)鈴木深保子,若林英行,吉田有人,出内桂二,塩谷順彦,板倉弘重.難消化デキストリン配合炭酸飲料の食後中性脂肪上昇抑制効果の検討. 薬理と治療 2010 ; 38(7) : 637-43.
5)海野知紀,鈴木裕子,野沢歩,堤坂裕子,角田隆己,穎川一忠,ほか.茶カテキンによる脂肪摂取後の血中中性脂肪上昇抑制効果.栄評治 2005 ; 22(2) : 207-12
6)原裕司,森口盛雄,楠本晶,中井正晃,小野佳子,阿部圭一,ほか. ポリフェノール強化ウーロン茶摂取による脂肪摂取後の血清トリグリセリド上昇抑制効果. 薬理と治療 2004 ; 32(6) : 335-42
7)Williamson EM .Major Herbs of Ayurveda.Philadelphia:Churchill Livingstone;2002.294-7
8)鮫島まゆ,鍔田仁人,池口主弥,小野裕之,髙垣欣也,柳田晃良.ターミナリアベリリカ抽出物によるラットの血中中性脂肪上昇抑制作用.日本食品科学工学会第54回大会講演集. 日本食品科学工学会第54回大会事務局; 2007. p.92.
9)Makihara H, Shimada T, Machida E, Oota M, Nagamine R, Tsubata M, et al. Preventive effect of Terminalia bellirica on obesity and metabolic disorders in spontaneously obese type 2 diabetic model mice. J Nat Med 2012 ; 66 : 459–67
10)Ikeda I, Tsuda K, Suzuki Y, Kobayashi M, Unno T, Tomoyori H, et al. Tea catechins with a galloyl moiety suppress postprandial hypertriacylglycerolemia by delaying lymphatic transport of dietary fat in rats. J Nutr 2005 ; 135(2) : 155–9
11)Nakai M, Fukui Y, Asami S, Toyoda(Ono) Y, Iwashita T, Shibata H, et al. Inhibitory effects of oolong tea polyphenols on pancreatic lipase in vitro. J Agric Food Chem 2005 ; 53(11) : 4593–8
12)卯川裕一,畠山佳貴,野呂明,福原育夫,提坂裕子. ガレート型カテキン配合飲料の摂取による便中脂質排斥効果. 薬理と治療2013 ; 41(9) : 919-27
13)Hsu TF, Kusumoto A, Abe K, Hosoda K, Kiso Y, Wang MF, et al. Polyphenol enriched oolong tea increases fecal lipid excretion. Eur J Clin Nutr 2006 ; 60(11) : 1330-6

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