本論文は許諾を得て掲載しています。
複製・転載を禁じます

第六章 多様な機能性を有する素材
「フラバンジェノール®」

フラバンジェノール®

上田英輝、川村弘樹、野辺加織
株式会社東洋新薬 研究開発本部

血流改善成分の開発と応用, 第Ⅲ編 血流改善素材・成分 130-137, 2018

はじめに

フラバンジェノール®は、フランス南西部に位置するランド地方に植林されたフランス海岸松(かいがんしょう)の樹皮から抽出された機能性素材である。フランス海岸松は、強い紫外線などの厳しい環境から樹体を防御するため、非常に肉厚な樹皮を持つ。またその樹皮はポリフェノールに富み、特にオリゴメリック・プロアントシアニジン(OPC)を多く含むことを特徴とする。

プロアントシアニジンとは、カテキンが縮重合したものである。OPCとはプロアントシアニジンの中でも縮重合度の低いもの(カテキンが2~4分子縮合した構造)を指す。したがって、OPCは縮重合度の高いプロアントシアニジンよりも水に溶けやすく、また比較的低分子であるために生体内における組織移行性にも優れていると考えられる。OPCの機能性に関する研究は世界各国で行われており、特にフランスでは松樹皮から抽出された医薬品が血管保護薬として長く用いられている。

当社では、これまでフラバンジェノール®の機能性に関して様々な研究を行い、多数の商品を開発してきた。また、2015年4月より施行された機能性表示食品制度においても、「松樹皮由来プロシアニジン(プロシアニジンB1として)」を機能性関与成分として「悪玉(LDL)コレステロールを下げる」機能性表示食品が消費者庁に受理されている。本稿では、フラバンジェノール®が持つ多様な機能性のうち、「血流改善作用」およびそれが寄与する生体での効果について紹介する。

フラバンジェノール®の特徴

フラバンジェノール®はフランス海岸松の樹皮を粉砕後、抽出、濾過、乾燥の各段階を経て当社独自の方法で製造される赤褐色の粉末である。主成分はOPCをはじめとするポリフェノールであり、熱に対して安定で、水に対して常温で非常によく溶解するため、顆粒、錠剤、飲料など各種加工に適する素材である。

フラバンジェノール®の血流改善作用

フラバンジェノール®の内用での血流改善作用を検討するため、軽度の生活習慣病(肥満、高血圧、脂質異常、耐糖能異常など)を患う成人男性10名にフラバンジェノール®40 mgを2週間連続で摂取させた1)。手における血流量について、レーザードップラーを用いて測定した。その結果、摂取前と比べて摂取1、2週後において血流量が有意に上昇した。

また、外用での効果を評価するため、健常成人10名(男性6名、女性4名)の片手に冷水負荷をかけて血流量を測定した後、試験品(1%フラバンジェノール®水溶液、0.1%の入浴剤が含まれる水溶液、精製水)を1分間塗布し、60、120分後に血流量を測定した2)。その結果、精製水塗布時と比べて、入浴剤含有水溶液塗布時には血流量の有意な上昇は認められなかったのに対し、フラバンジェノール®水溶液塗布時は60、120分後において有意な血流量の上昇が認められた(図1)。

以上の結果から、フラバンジェノール®は内用および外用において血流改善作用を示すことが明らかとなった。

第六章 多様な機能性を有する素材「フラバンジェノール®」①

血流改善作用の作用機序

血管拡張作用

フラバンジェノール®による血流改善に関する作用機序として、血管拡張作用に着目して動物試験による評価を行った。1%フラバンジェノール®水溶液10 µLをラットの腸間膜細動脈に直接投与し、投与開始前と投与180秒後の血管内径の変化を観察した。その結果、投与開始前と比べ、投与180秒後には明らかな血管内径の拡張が認められた(図2)。また、1%フラバンジェノール®水溶液500 µLを頸静脈的に全身投与すると、平均血圧の下降が認められた。

以上の結果から、フラバンジェノール®は微小血管系および全身循環系において血管拡張作用を示すことが明らかとなった。フラバンジェノール®は血管内皮細胞からのNO産生を促進することが明らかとなっており3)、血管拡張作用にはこのNO産生促進が寄与していると考えられる。

第六章 多様な機能性を有する素材「フラバンジェノール®」②

赤血球変形能向上作用

赤血球は毛細血管などの自己の直径より細い管を通過する際はその形を変形させる。この能力を赤血球変形能といい、血液の流動性を規定する上で重要な要素となる4)

そこで、赤血球変形能に対するフラバンジェノール®の影響を評価するため、軽度の生活習慣病(肥満、高血圧、脂質異常、耐糖能異常など)を患う成人男性10名にフラバンジェノール®40 mgを2週間連続で摂取させた1)。赤血球変形能はニッケルメッシュフィルトレーション法5)により評価した。その結果、摂取開始前と比べて摂取2週後において赤血球変形能が有意に向上した。

以上の結果から、フラバンジェノール®は赤血球変形能向上作用を示すことが明らかとなった。赤血球変形能に対しては過酸化脂質や酸化ストレスが悪影響をおよぼすと考えられている6),7)。フラバンジェノール®はビタミンCの約600倍に相当する優れた抗酸化作用を有することが過去の研究より明らかとなっており8)、赤血球変形能の向上にはこの抗酸化作用が寄与していると考えられる。

またフラバンジェノール®による血流改善に関する機序として考えられる作用としては、そのほかに「血小板凝集抑制作用」も報告されている9)

フラバンジェノール®の多様な機能性

メタボ予防(LDLコレステロール値低下)

血中にコレステロールが過剰に存在すると、血液の粘性が上昇してその流動性が悪化するため、コレステロール値の低下は血流の改善に密接に関連している10)。また、コレステロールを含む血清脂質量は、メタボリックシンドロームの診断基準の1つとなるため、血清脂質量を改善することはメタボリックシンドロームの予防に寄与する。

そこで、フラバンジェノール®の血清コレステロールにおよぼす影響を検証するために、機能性表示食品の届出等に関するガイドライン(消費者庁)に準じ、LDLコレステロール値が140 mg/dL未満の健常成人37名に対して解析を行った11)。試験群としては、フラバンジェノール®を1日あたり40 mg摂取する群(FVG 40 mg群)、80 mg摂取する群(FVG 80 mg群)およびプラセボ食品摂取群の3群を設けた。その結果、FVG 80 mg群では、プラセボ食品摂取群に対して、摂取12週後においてLDLコレステロール値が有意に低下した。また、摂取前に対して、摂取8週後、摂取12週後、摂取を終了して4週後の事後検査においてLDLコレステロール値が有意に低下した(図3)。

以上の結果から、フラバンジェノール®はLDLコレステロール値低下作用をもち、血流の改善に寄与するだけでなく、メタボリックシンドロームの予防にも役立つと考えられる。

第六章 多様な機能性を有する素材「フラバンジェノール®」③

むくみ(浮腫)改善

むくみが発生する主な原因として、長時間座り続ける、立ち続けるなどの同じ姿勢での作業による血行不良が知られている12)。よってむくみの改善には、血管・血流の状態を正常に保つことが重要であると考えられる。

そこで、フラバンジェノール®のむくみに対する改善効果を検証するために、22歳から50歳までの閉経前でむくみの症状がある成人女性24名に対して試験を実施した13)。被験者には、初めに観察期間(フラバンジェノール®を摂取しない期間)を4週間おいた後、フラバンジェノール®を1日2回朝夕食後それぞれ75 mg(l日量150 mg)、継続して4週間摂取させた。そして、観察期間前、摂取開始前および摂取4週間後においてアンケート調査を実施し、自覚症状を調査した。

その結果、むくみの症状については、手、足、顔のいずれの部位においても、観察期間中と比べて摂取4週間後に有意な改善が認められ、フラバンジェノール®はむくみに対する改善効果を示すことが示された。また、付随して調査した肩こりについても、摂取4週間後に有意な改善が認められ、手足の冷えについては低下傾向が認められた。これらの効果は、フラバンジェノール®の摂取による末梢血管系の血液循環の改善作用が寄与していると考えられる。

シミ改善

シミの主な原因として紫外線によるメラニンの過剰生成が挙げられるが、皮膚の新陳代謝が低下すると、生成したメラニンがはがれ落ちずに表皮の基底部に沈着してしまう14)。よってシミの改善には皮膚の新陳代謝を高めることが重要であり、またそのためには皮膚の血液循環を改善することも有効な手段であると考えられる15)

そこで、フラバンジェノール®のシミに対する改善効果を検証するために、顔面にシミを有する健常成人女性38名に対して試験を実施した16)。被験者にはフラバンジェノール®40 mgを24週間毎日摂取させ、摂取開始前から摂取24週間後まで4週間おきにシミの部分のメラニン・インデックス(メラニンの量、黒色度を表す値)を測定した。その結果、摂取8週間後から24週間後までメラニン・インデックスの有意な改善が認められ、フラバンジェノール®の摂取によりシミが薄くなったことが示唆された。さらに、シミをはじめくすみ、シワなど皮膚の諸症状に対する有用性を皮膚科医が総合的に評価した結果は、非常に改善:1例(3%)、改善:16例(42%)、やや改善:16例(42%)、不変5例(13%)、悪化:0例(0%)となり、やや改善以上の結果は全体の87%以上をしめた。これらの効果には、フラバンジェノール®による皮膚の血流改善作用およびメラニン生成抑制作用17)が寄与していると考えられる。

育毛促進

毛髪の成長において、毛髪内の毛母細胞の分裂・分化促進が重要であることが知られているが、ほかに血流促進により毛母細胞の代謝を促進することも重要である18)

そこで、フラバンジェノール®の育毛促進作用について検証するために、動物試験を実施した。試験にはバリカンとシェーバーで背部の毛を剃ったC3Hマウスを用い、フラバンジェノール®の塗布および経口摂取による育毛促進効果を検証した。塗布は1日1回0.05%フラバンジェノール®/50%エタノール溶液0.2 mLを背部に行い、経口摂取は1%フラバンジェノール®水溶液の自由摂取により行った。コントロールとしては50%エタノール塗布と蒸留水の経口摂取を行った。試験群は、コントロール群、フラバンジェノール®塗布群、フラバンジェノール®経口摂取群およびフラバンジェノール®塗布+経口摂取群の計4群を設けた。そして、試験開始21日後にマウスの背部をデジタルカメラで撮影し育毛促進作用の評価を行った。その結果、コントロール群に比べてフラバンジェノール®塗布群、フラバンジェノール®経口摂取群ともに育毛促進作用を示し、フラバンジェノール®塗布+経口摂取群についてはさらに強い育毛促進作用が認められた(図4)。

以上の結果から、フラバンジェノール®は塗布すると同時に経口摂取させることによって、優れた育毛促進作用を示すことが認められた。これらの効果にはフラバンジェノール®の毛乳頭細胞賦活作用19)や血流改善作用が寄与していると考えられる。

第六章 多様な機能性を有する素材「フラバンジェノール®」④

フラバンジェノール®の安全性

フラバンジェノール®の内用の安全性に関しては、健常成人に1日あたり120 mgを12週間摂取させる臨床試験20)や、1日あたり40 mgを72週間摂取させる臨床試験16)を行ったが、フラバンジェノール®摂取を原因とする有害事象は認められなかった。

フラバンジェノール®の外用の安全性に関しては、24時間閉塞パッチテスト、累積刺激および感作試験(RIPT)を多数実施した。パッチテストで3%、RIPTで0.5%の濃度の水溶液で実施したが、いずれも安全性に問題は見られなかった。

以上の結果から、フラバンジェノール®は食品、化粧品に配合するにあたり安全な素材であると考えられる。

おわりに

我々は、フラバンジェノール®に関する長年の研究の結果、本稿で紹介してきた「血流改善作用」による機能性として、そのほかに「歯周病予防効果21)」も見出している。また、「血流改善作用」のほかにも、「抗炎症作用22)」、「PMS(月経前症候群)の症状緩和作用23)」、「体重・体脂肪増加抑制作用24)」、「血糖値上昇抑制作用25)」など様々な機能性を見出してきた。フラバンジェノール®は、このような多岐にわたる機能性から、血流改善作用を含め様々な訴求を目的とした商品に応用可能である。

今後もフラバンジェノール®の様々な臨床的有用性の検証を進め、人々の健康の維持・増進に役立つフラバンジェノール®を世に広めていきたいと考えている。

引用文献

1) Y. Ohnishi et al., J. Jpn. Soc. Biorhol., 19(2), 83-92 (2005)
2) 草場宣延ほか, FOOD Style 21, 15(5), 55-57 (2011)
3) 森口盛雄ほか, 薬理と治療, 34(5), 511-528 (2006)
4) 上坂伸宏ほか, Membrane, 30(6), 308-311 (2005)
5) 小川哲司, 日本バイオレオロジー学会, 14(1), 40-45 (2000)
6) 那須恵子ほか, 研究紀要, (9), 229-240 (1995)
7) Y. Huang et al., Clin Hemorheol Microcirc., 23(2-4), 287-90 (2000)
8) 飯野妙子ほか, ジャパンフードサイエンス, 43(1), 40-45 (2004)
9) 松田康章, New Food Industry, 47(1), 15-21 (2005)
10) 佐藤清人ほか, 脳卒中, 15, 30-39, 1993
11) 浜亮介ほか, 応用薬理, 93(1), 7-11 (2017)
12) S. Akihiko et al., J. Occup. Health, 38, 186-189 (1996)
13) 高垣欣也ほか, 食品と開発, 39(8), 68-70 (2004)
14) L. Sarrat, Bordeaux Med., 14, 685-8 (1981)
15) 須賀康ほか, 順天堂医学, 52(3), 429-36 (2006)
16) M. Furumura et al., Clinical Interventions in Aging 7, 275-286 (2012)
17) 杉山大二朗ほか, FOOD Style21, 13(7), 28-29 (2009)
18) 鈴木正人, 機能性化粧品の開発, 112-116 (2000)
19) 鍔田仁人ほか, 2008年度日本農芸化学会要旨集, 143 (2008)
20) 草場宣延ほか, 第41回日本動脈硬化学会要旨集, 315 (2009)
21) 草場宣延ほか, FOOD Style 21, 12(8), 77-79 (2008)
22) M. Tsubata et al., J. Nutr. Sci. Vitaminol., 57(3), 251-257 (2011)
23) T. Matsuda et al., the 17th Meeting of the Japan Mibyou System Association abstract papers, 113 (2010)
24) 池口主弥ほか, 日本健康科学学会第21回学術大会抄録集, 445 (2005)
25) 鍔田仁人ほか, 第61回日本栄養・食糧学会大会講演要旨集, 106 (2007)