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葛の花エキス含有粉末茶飲料の肥満者を含む健常成人に対する過剰量摂取時の安全性に関する検討

葛の花エキス™

神谷智康1)、八尋衣里奈1)、城戸弥生1)、髙野晃1)、池口主弥1)、髙垣欣也1)、杉村春日2)
1 )東洋新薬 開発本部、2 )医療法人社団進興会 セラヴィ新橋クリニック

薬理と治療 vol.41 no.2, 167-182, 2013

ABSTRACT(概要)

Objectives
Pueraria flower extract (PFE) is a crude extract of the Kudzu flower (Pueraria thomsonii). A randomized, double-blind, placebo-controlled study was conducted to evaluate the safety of an excessive intake of the powdered drink containing PFE.

Methods
Twenty nine healthy adults (male=15, female=14) were divided into two groups, one is test group and the other is placebo group. The subjects ingested a test food (7.5 g powdered tea containing PFE) or a placebo food (7.5 g powdered tea without PFE) for 4 weeks, respectively. A blood, urinalysis, and physical tests were performed at weeks 0, 2, 4, and 6.

Results
No abnormal changes were noted in blood, urinalysis, endocrine, and the other parameters for any of the both groups. In addition, no treatment-related side effects were observed.

Conclusions
These results suggest that the powdered drink containing PFE is safe in the case of excessive intake.

Keywords
Pueraria flower extract, Excessive intake, Safety

はじめに

葛の花エキスは、マメ科クズ属の半低木性のつる性多年生植物であるクズ(Pueraria thomsonii)の乾燥花部の熱水抽出物である。葛の花は、中国では約1000年前からアルコール中毒対策として伝統的に使用されてきた歴史を有する1)。現代中国では、菊花茶や薔薇茶などのように、植物をお茶として飲用する習慣があるが、葛花茶もその一つである2)。葛花茶の抽出方法としては、乾燥物にお湯を注いで抽出するという、日本人にもなじみの深い方法が広く用いられている。また、韓国でも葛の花から抽出したお茶が飲用されており3)、わが国においても、葛の若芽、若葉や花が、あえもの、炒めもの、煮もの、てんぷら、酢のもの等様々な料理法で山菜として食されていることから2)、葛の花は東アジアの食文化に広く根づいていることがうかがえる。

葛の花エキスは、配糖体型のフラボノイドであるtectoridinおよびtectorigenin 7-O-xylosylglucosideおよびこれらのアグリコン型であるtectorigeninを主要成分として含有することが知られている4)
われわれは、肥満者または肥満傾向者に対し、葛の花エキスを継続摂取させることで抗肥満作用を有することをすでに報告している5, 6)。さらに、食餌誘発性肥満モデルマウスを用いた研究にて、葛の花エキスの抗肥満作用は、フラボノイドリッチ画分に活性が存在し、そのメカニズムとしては肝臓での脂肪合成系遺伝子発現の抑制が関与していることを報告している4, 7)
葛の花エキスの主要フラボノイドであるtectoridinおよびtectorigenin 7-O-xylosylglucosideは、いずれも消化管においてtectorigeninに代謝されることが報告されているが8)、われわれは、HepG2を用いたin vitro試験において、tectorigenin濃度依存的に脂肪蓄積抑制作用を発揮することを確認している(未発表データ)。したがって、葛の花エキスに含まれるこれらの3種類の成分(以下、葛花フラボノイド)が葛の花エキスの抗肥満作用に関与しているものと考えられる。

そのため、われわれは、葛花フラボノイドを34.9 mg含有する粉末茶飲料を開発し、その抗肥満作用を検証した結果、12週間の継続摂取により腹部脂肪面積が対照食品と比較して有意に低下することが確認された9)。そこで、本試験では、葛花フラボノイドを1日摂取量(1袋)あたり41.6 mg含有する粉末茶飲料の過剰量摂取時の安全性を検証することを目的として、1日摂取量の3倍量にあたる3袋を4週間にわたり摂取させる二重盲検並行群間試験を実施した。

対象と方法

対象者

公募に対して応募のあったBMIが30未満で、各検査2日前からの禁酒が可能な20歳以上65歳未満の男女を被験者候補とした。試験の目的・内容について十分な説明を行い、被験者から書面で試験参加の同意を得たうえで事前検査を行い、以下の除外基準に抵触しない30名(男性:15名、女性:15名)を被験者とした。

除外基準:肥満、高脂血症、脂質代謝等に影響を及ぼす可能性がある医薬品使用者。試験期間中に肥満、高脂血症、脂質代謝等に影響を及ぼす可能性があるサプリメント・健康食品の摂取をやめる事ができない者。重篤な糖尿病、腎・肝疾患を有する者、緊急に治療を要する疾患に罹患している者。消化吸収に影響を与える消化器疾患、手術歴がある者。薬物依存、アルコール依存の既往歴あるいは現病歴がある者。家族性高脂血症と診断されたことがある者。妊娠している者、試験期間中妊娠の意思がある者、授乳中の者。他の食品の摂取や薬剤を使用する試験、化粧品および薬剤などを塗布する試験に参加中の者、参加の意志がある者。その他、試験責任医師が被験者として不適当と判断した者。

本試験は医療法人社団進興会 セラヴィ新橋クリニック試験審査委員会 (委員長:柳田やよい)の審議・承認(承認日:2011年3月21日)を得たうえで、ヘルシンキ宣言の精神にのっとり実施した。

試験食品

被験食品には葛の花エキスに澱粉分解物、緑茶エキスなどを混合後、造粒し、顆粒に調製したものを使用した。対照食品として、被験食品中の葛の花エキスを澱粉分解物に置き換え、さらにカラメル色素で色づけすることで、被験食品との区別がつかないように調製したものを使用した。被験食品および対照食品ともに1袋2.5 gの無地アルミ個包装とした。

被験食品の熱量および栄養成分値は1袋(2.5 g)あたり、熱量9.4 kcal、水分0.1 g、蛋白質0.1 g、脂質0.0 g、糖質2.3 gであり、対照食品では、1袋(2.5 g)あたり、熱量9.7 kcal、水分0.1 g、蛋白質0.0 g、脂質0.0 g、糖質2.4 gであった。なお、被験食品中の葛花フラボノイド含量は、「食品中の大豆イソフラボンアグリコン(アグリコン当量)の試験方法」(大豆イソフラボンを含む特定保健用食品等の取扱いに関する指針について(別紙)、食安発第0823001号、平成18年8月23日)を準用し定量した結果、1袋あたり41.6 mgであった。

試験スケジュール

試験スケジュールを図1に示した。前観察期間を2週間、摂取期間を4週間、後観察期間を2週間とする計8週間のプラセボを対照とした二重盲検並行群間試験を実施した。被験者は、試験に直接関与しない医師が、スクリーニング結果に基づいて無作為に2群に割り付けた。

摂取期間中は、被験食品群には被験食品を、対照食品群には対照食品をそれぞれ摂取させた。被験食品、対照食品はそれぞれ200 mLの水またはお湯に溶かして、1日1回3袋(7.5 g)をとくに時間を指定せずに摂取させた。すなわち、被験食品群では、葛花フラボノイドを1日あたり124.8 mg摂取することになる。

試験期間中は、試験開始前と同様の生活を送るよう指導したほか、アルコール摂取を控え、肥満、高脂血症、脂質代謝等に影響を与えるサプリメント等の使用または摂取を避け、緊急時を除いて医薬品を服用しないように指導した。なお、各検査日2日前から禁酒とし、検査前日の21時以降は水以外の飲食は行わないよう指導した。検査日当日は、検査1時間前から全検査終了まで禁煙とした。

葛の花エキス含有粉末茶飲料の肥満者を含む健常成人に対する過剰量摂取時の安全性に関する検討①

検査項目

1)栄養素摂取量
被験者に、食事日誌を配布し、各検査前3日間(計12日間)、食事内容をすべて記録させた。得られた記録から栄養計算ソフト「エクセル栄養君」((株)建帛社製)を用いて各期間ごとの1日あたりの栄養素摂取量(エネルギー、蛋白質、脂質、糖質および食物繊維)を計算した。

2)身体検査・バイタルサイン
身体検査・バイタルサインは試験食品摂取前(以下、摂取前という)、摂取開始2週間後(以下、摂取2週間後という)、摂取開始4週間後(以下、摂取4週間後という)および後観察終了後(以下、事後検査という)の計4回行った。体重、BMI、ウエスト周囲径、ヒップ周囲径、血圧(収縮期血圧および拡張期血圧)および脈拍数とした。

3)血液検査
血液検査は身体検査・バイタルサインと同日に行った。検査項目は、血液学検査(白血球数、赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、血小板数、MCV、MCH、MCHCおよび白血球像(Neutrophil、Lymphocyte、Monocyte、EosinophilおよびBasophil))、生化学検査(総蛋白、アルブミン、AST、ALT、LDH、総ビリルビン、ALP、γ-GTP、CPK、尿素窒素、クレアチニン、尿酸、Na、Cl、K、Ca、P、Mg、Fe、TIBC、UIBC、総コレステロール、LDL-コレステロール、HDL-コレステロール、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸、空腹時血糖、HbA1c(NGSP値)、インスリン、フェリチン、総ケトン体およびケトン体分画(アセト酢酸および3-ハイドロキシ酪酸)および内分泌学検査(エストロン、エストラジオール、エストリオール、プロジェステロン、プロラクチン、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、テストステロン、遊離テストステロン、性ホルモン結合グロブリン(SHBG)、遊離トリヨードサイロニン(FT3)、遊離サイロキシン(FT4)、サイロキシン結合グロブリン(TBG)、甲状腺刺激ホルモン(TSH))とした。
なお、内分泌学検査は摂取前と摂取4週間後に行った。分析は三菱化学メディエンス(株)に依頼して実施した。

4) 尿検査
尿検査は身体検査・バイタルサインと同日に行った。検査項目は、定性検査(蛋白、糖、ウロビリノーゲン、ビリルビン、ケトン体および潜血反応)および定量検査(pHおよび比重)とした。分析は三菱化学メディエンス(株)に依頼して実施した。

5)被験者日誌
前観察期間より事後検査前日までの全試験期間を通して、被験者には被験者日誌を配布し、自己記入方式により毎日記入させた。

調査項目は試験食品摂取状況、アルコール摂取状況、胃腸症状等の体調変化、生活状況の変化の有無、医薬品使用の有無および健康食品類の摂取の有無とした。

6)問診
身体検査・バイタルサインと同日に行った。

統計解析

測定値は平均値±標準偏差で示した。群内比較においては、尿定量検査、血液検査(血液学検査および生化学検査)および身体検査・バイタルサインについてはDunnett多重比較を用いて解析を行い、血液検査(内分泌学検査)については対応のあるt検定を用いて解析を行った。群間比較においては、対応のないt検定を用いて解析を行った。

いずれの検定においても両側検定で危険率5%未満(p<0.05)を有意差ありと判定した。統計解析ソフトにはStatView ver.5.0(SAS Institute Inc., Cary, NC, USA)を使用した。

結果

中止者の報告

試験期間中に試験食品とは無関係の理由で1名が試験を中止したため、29名が試験を完了した。なお、指導内容から逸脱した被験者はいなかったため、29名を解析の対象とした。解析対象者29名の被験者背景を表1に示した。

葛の花エキス含有粉末茶飲料の肥満者を含む健常成人に対する過剰量摂取時の安全性に関する検討②

栄養素摂取量

試験期間中の栄養素摂取量の推移を表2に示した。被験食品群では、摂取0~2週間後で脂質(女性)において、摂取前と比較して有意な増加が認められた。群間比較では、摂取0~2週間後のエネルギー(女性)、脂質(女性)および食物繊維(全体、女性および男性)において、被験食品群と対照食品群とのあいだに有意差が認められた。

葛の花エキス含有粉末茶飲料の肥満者を含む健常成人に対する過剰量摂取時の安全性に関する検討③

身体検査・バイタルサイン

身体検査・バイタルサイン値の推移を表3に示した。被験食品群ではヒップ周囲径(男性)において、対照食品群ではウエスト周囲径(全体および女性)において、摂取前と比較して有意な変動が認められたが、いずれも微小な変動であり、臨床上問題ないものと判断された。その他検査項目においては摂取前と比較して有意な変動は認められなかった。また、いずれの検査項目においても対照食品群と被験食品群とのあいだに有意差は認められなかった。

葛の花エキス含有粉末茶飲料の肥満者を含む健常成人に対する過剰量摂取時の安全性に関する検討④

血液学検査

血液学検査値の推移を表4に示した。被験食品群では赤血球数(全体および男性)、ヘモグロビン(男性)、MCV(全体、女性および男性)およびMCHC(全体、女性および男性)において、対照食品群ではヘマトクリット(全体および女性)、MCV(全体、女性および男性)、MCH(全体および女性)、MCHC(全体、女性および男性)および白血球像(Eosinophil)(全体)において、摂取前と比較して有意な変動が認められたが、いずれも基準値範囲内の変動であり、臨床上問題ないものと判断された。その他検査項目においては摂取前と比較して有意な変動は認められなかった。
なお、摂取前のMCV(男性)、摂取前および摂取2週間後の白血球像(Monocyte)(女性)において、対照食品群と被験食品群とのあいだに有意差が認められたが、いずれも摂取前から認められているもののため、臨床上問題ないものと判断された。その他検査項目においては対照食品群と被験食品群とのあいだに有意差は認められなかった。

葛の花エキス含有粉末茶飲料の肥満者を含む健常成人に対する過剰量摂取時の安全性に関する検討⑤
葛の花エキス含有粉末茶飲料の肥満者を含む健常成人に対する過剰量摂取時の安全性に関する検討⑥

生化学検査

生化学検査値の推移を表5に示した。被験食品群ではγ-GTP(全体および男性)、Na(全体および女性)、Cl(全体、女性および男性)、Ca(全体、女性および男性)、Mg(全体および男性)、LDL-コレステロール(全体および男性)、リン脂質(全体および男性)、遊離脂肪酸(全体および女性)およびHbA1c(全体、女性および男性)において、対照食品群ではクレアチニン(全体、女性および男性)、Na(全体および女性)、Cl(全体、女性および男性)、Ca(全体および男性)、Mg(全体および女性)、総コレステロール(男性)、空腹時血糖(全体および男性)およびHbA1c(全体および女性)において、摂取前と比較して有意な変動が認められたが、いずれも基準値範囲内の変動であり、臨床上問題ないものと判断された。その他検査項目においては摂取前と比較して有意な変動は認められなかった。
なお、摂取2週間後のNa(女性)、摂取2週間後および事後検査のK(男性)、摂取前、摂取2週間後、摂取4週間後および事後検査のHDL-コレステロール(男性)、摂取前および事後検査のリン脂質(男性)、事後検査の遊離脂肪酸(全体および女性)、事後検査のインスリン(女性)、摂取4週間後の総ケトン体(全体)および摂取4週間後の3-ハイドロキシ酪酸(全体)において、対照食品群と被験食品群とのあいだに有意差が認められた。摂取2週間後のNa(女性)を除き、いずれも被験食品群で摂取前と比較して有意な変動は認められていないため、臨床上問題ないものと判断された。また、摂取2週間後のNa(女性)については、連続的な変動ではないことから臨床上問題ないものと判断された。その他検査項目においては対照食品群と被験食品群とのあいだに有意差は認められなかった。

葛の花エキス含有粉末茶飲料の肥満者を含む健常成人に対する過剰量摂取時の安全性に関する検討⑦
葛の花エキス含有粉末茶飲料の肥満者を含む健常成人に対する過剰量摂取時の安全性に関する検討⑧
葛の花エキス含有粉末茶飲料の肥満者を含む健常成人に対する過剰量摂取時の安全性に関する検討⑨
葛の花エキス含有粉末茶飲料の肥満者を含む健常成人に対する過剰量摂取時の安全性に関する検討⑩

内分泌学検査

内分泌学検査値の推移を表6に示した。被験食品群ではプロラクチン(全体、閉経前女性および男性)、FT4(男性)およびTSH(全体)において、対照食品群ではエストラジオール(全体および男性)、プロラクチン(全体)およびFSH(全体)において、摂取前と比較して有意な変動が認められたが、いずれも基準値範囲内の変動であり、臨床上問題ないものと判断された。その他検査項目においては摂取前と比較して有意な変動は認められなかった。
なお、摂取4週間後のプロジェステロン(男性)、摂取前のFT4(女性)および摂取4週間後のTBG(男性)において、対照食品群と被験食品群とのあいだに有意差が認められたが、いずれも被験食品群で摂取前と比較して有意な変動は認められていないため、臨床上問題ないものと判断された。その他検査項目においては対照食品群と被験食品群とのあいだに有意差は認められなかった。

葛の花エキス含有粉末茶飲料の肥満者を含む健常成人に対する過剰量摂取時の安全性に関する検討⑪

尿検査

1)尿定性検査
尿蛋白において被験食品群で摂取2週間後に女性1例(±)が認められたが、被験者日誌より月経が確認された。対照食品群で摂取2週間後に男性1例(±)が認められたが、軽微かつ一過性のものであり、臨床上問題ないものと判断された。
尿潜血反応において被験食品群で摂取2週間後に女性1例(3+)が認められたが、被験者日誌より月経が確認された。また、事後検査に男性1例(3+)が認められたが一過性のものであり、臨床上問題ないものと判断された。対照食品群で摂取2週間後に女性1例(±)、摂取4週間後に女性1例(+)が認められたが、いずれも軽微のものであり、臨床上問題ないものと判断された。

2)尿定量検査
尿定量検査値の推移を表7に示した。いずれの検査項目においても有意な変動は認められなかった。

葛の花エキス含有粉末茶飲料の肥満者を含む健常成人に対する過剰量摂取時の安全性に関する検討⑫

有害事象

試験期間中に発現したすべての有害事象を表8に示した。対照食品群および被験食品群において複数の有害事象が発現したが、いずれも因果関係はないものと判断された。

葛の花エキス含有粉末茶飲料の肥満者を含む健常成人に対する過剰量摂取時の安全性に関する検討⑬

考察

本試験では、葛の花エキス含有粉末茶飲料の過剰量摂取時の安全性を確認するために、健常成人30名を対象として、1日摂取量の3倍量の試験食品を4週間にわたり連続的に摂取させ、身体検査・バイタルサイン、血液・尿検査および自覚症状などについて検査する二重盲検並行群間試験を実施した。その結果、被験食品と因果関係のある有害事象の発現は認められなかった。

血液学検査および生化学検査では、被験食品群において摂取前と比較して有意差が認められた検査項目のうち、連続的な変動が認められた検査項目として、MCV、MCHC、マグネシウムおよびHbA1cが挙げられる。MCV、MCHCおよびマグネシウムにおいては、対照食品群においても被験食品群と同様の変動であること、またいずれも基準値範囲内の変動であることから臨床上問題ないものと考えられた。HbA1cにおいては被験食品群において摂取前と比較して有意に低い値を示したが、血糖コントロールの指標である、空腹時血糖およびインスリンには有意な変動が認められていないことから、臨床上意義のある変動ではないものと考えられた。

内分泌検査では、被験食品群において、プロラクチン(全体、閉経前女性および男性)、FT4(男性)およびTSH(全体)で、摂取前と比較して有意な変動が認められた。プロラクチンは脳下垂体から分泌されるホルモンであるが、臨床上特に重要なものは高プロラクチン血症であり、無月経や月経異常を引き起こすことが知られている10)。本試験におけるプロラクチンの変動は基準値範囲内で低下していることと併せ、プロラクチンと同様に脳下垂体から分泌されるLHおよびFSH11)においては被験食品群で有意な変動は認められていない。さらには、対照食品群(全体)においてもプロラクチンは有意に低下しており、男性や閉経後女性においても被験食品群と同じく低下する傾向が認められていることから、本試験で認められたプロラクチンの変動は被験食品と関係のあるものではないと考えられた。TSHは糖蛋白ホルモンであり、甲状腺ホルモンによりネガティブフィードバック抑制を受ける。このフィードバック調節は極めて鋭敏であり、甲状腺ホルモンが基準域を超えない程度の高値でもTSHは低値になり、逆に甲状腺ホルモンがわずかに低下してもTSHは高値となる12)。本試験で認められたFT4およびTSHの変動は、基準値範囲内での変動であることと併せ、このような連動性のある変動ではない。さらには、対照食品群においても被験食品群と同様に低下傾向が認められていることから、本試験で認められたTSHの変動は被験食品と関係のあるものではないと考えられた。

乾燥した葛の花は、お茶として中国や韓国などで広く飲用されている。本試験では、そのお茶と同様の抽出方法(熱水抽出物)で作成した葛の花エキスを含有する茶飲料の過剰量摂取時の安全性を検証した結果、臨床上問題となる有害事象は認められず、その安全性に問題ないことが示唆された。このことは、伝統的に利用されている葛の花の安全性をヒト試験にて検証した重要な知見であると考えられる。

結論

葛花フラボノイドを41.6 mg含有する粉末茶飲料は、1日摂取目安量の3倍量を4週間連続摂取した場合でも安全性に問題ないものと考えられた。

文献

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